【リポート①】チャレキッズ・ジョブクエスト特別企画《 ゲームリテラシー〜ゲーム依存にならないためのガイドラインづくり〜》
eスポーツとゲーム障害
令和元年6月29日、チャレキッズジョブクエスト特別企画、《 ゲームリテラシー〜ゲーム依存にならないためのガイドラインづくり〜》、公認心理師、強度行動障害のスペシャリスト、そして福岡eスポーツ協会の皆さんをお迎えし開催。
話題のeスポーツイベントで、「依存症」、「強度行動障害」などの視点を学ぶという、チャレキッズ ならではの企画だ。
ことのはじまりは「ちょっと待った!」だった
事の始まりはチャレキッズで開催した2月のイベント、「お仕事チャレンジフェス2019」で、「eスポーツのお仕事」の企画をさせていただいた事から。
イベントでは、「eスポーツのお仕事」は大好評。多くの発達に特性のある若者が参加した。それを受けて「今後もチャレキッズでeスポーツに取り組んでいきたい!」と発信した所、、「ちょっとまった!」がかかったのだ。
発達障がいの特性とゲーム依存
「ちょっと待った」をかけたのは、NPO法人さるくの代表、長瀬慎一氏。
強度行動障害の臨床におけるスペシャリスト。行動分析学に基づいたアプローチでたくさんの実績をお持ちでいらっしゃる。
氏いわく、「eスポーツがスポーツかどうか以前に、発達障害の子どもたちは依存になりやすい背景がある。安易に“eスポーツウェルカム”を唱えるのは危険だ」ということだった。
チャレキッズとしては、eスポーツを社会と接する窓口とすることで、ゲームの世界に居場所を感じている発達に特性のある子どもたちに、ゲームを通して社会との接点を作ってもらおう、という思いだったことを伝える。
その部分では氏も同意、ただし「発達に特性のある子どもたちがどのような理由で依存になりやすいかを広く知っていただくことが必要だ」という話になり、当人や支援者だけでなく、実際にeスポーツを普及される立場の皆さんにも聞いていただき、お互いに学ぶ機会を設けようという話となり、今回の「チャレキッズ×ゲーム依存×eスポーツ」というなかなか見ることができないトークセッションの企画がスタートしたのだった。
今回のお話は、単に「ゲームと発達障がい」ということをテーブルに乗せても、わからないことが多い。
そこで、「依存のメカニズム」についても知見のある、ジャパンマック福岡のカウンセリングルーム「やどりぎ」より、公認心理師の谷川芳江氏にご登壇いただく依頼をした。快諾くださった谷川氏だったが、ジャパンマック福岡としては少し検討したいというお話も出た。安易にeスポーツを容認するようなメッセージになってはいけないので、どのような趣旨かを確認したい、ということで、私もやどりぎを訪問。施設長に企画の意図などを説明させていただいた。
ジャパンマックでは、依存を経験した当事者同士が語り合い、自助グループを作って依存のループに戻らないようにする取り組みを行っている。それがなによりも効果的なのだそうだ。
その上で依存のメカニズムを研究し、他の依存にスリップしないように気をつけること、周りの関係者(家族)の中に原因の根本が眠っていることもあることなどを知った。
「発達に特性があるから依存になりやすい」。そう決めつけるのも危険だが、依存に陥りやすい方が多いのも事実だ。
そのメカニズムを知ることで、気をつけるべきことも見えてくることがあるという。
谷川氏による依存のメカニズムについてのセッション
セミナーは9時よりスタート。関心の高さを感じることができる参加者のみなさんと一緒に考えることからスタートした。
お話は以下の内容で進行した。
1,依存症ってそもそもなに
2,ゲーム障害について
3,ゲーム障害そのとき家族は
1)本人の気持ちの変化
2)家族ができること
1,依存症ってそもそもなに
乱用・中毒・依存の違い、脳内でなにが起こるのか、依存しやすい人、しにくい人の違いとは?
依存症の人の心理的特徴、依存症は誰にとっても身近な病気であることなどが伝えられた。
そして、そのループに入るキッカケとして、
・苦痛を抱えた幼少体験
・ストレスの高い職場環境
・自由のない生活環境
・従属的な性格
などが挙げられるという。
2,ゲーム障害について
ネット依存・ゲーム依存の特徴
他の依存との共通点
1)ネットやゲームに対する強い渇望
2)1日10時間以上も続けたり、授業中・勤務中にスマホをチェックしたりするなど、行動を調整できない
3)離脱症状はないが、ネットやゲームができないとイライラする、無気力になる
4)耐性ができる。最初は数分で満足できても、やがて10 時間以上続けても満足できない
5)現実の生活に支障がでる
6)ネットやゲームのやめにくいシステム
(他の依存症以上にやめることが難し場合も)
などがあげられる。
他にも、セミナー中に示された資料をいくつかご紹介しょう。
3,ゲーム障害そのとき家族は
大切な依存のメカニズムへの理解
谷川氏のお話を聞くと、「なんとなく胸のあたりでざわついていた危機感」の輪郭が見えてくる。
そして、その対策や向き合い方の基礎的知識が言語化される事で、これから先取るべき行動が見えてくる。
そこから、夫々が参考資料となっている本などを読み、知識を深めていくことが必要だと、谷川氏は伝えてくれた。
長瀬氏の行動障害のある方への対応についてのお話
続いては、NPO法人さるくの長瀬慎一氏のお話。
多くの発達に特性のある方の行動に向き合ってきた長瀬氏が、彼らの特徴の説明や脳機能の特徴。
それらが原因によって起る様々な行動特徴にどのように向き合うか、などのお話があった。
そして、現在のオンラインゲームというものが、いかに行動分析学的な視点からも、「抜けにくい」「ハマりやすい」構造になっているかの説明もあった。
これには、会場の皆さんが、「なるほど!」「だから抜けにくいんだ」などという感想を持ったことと思う。
そして、長瀬氏が専門としている、行動障害が激しくなった場合の“レスキュー”のお話もあり、「そうなる前にぜひ、兆候を察知し、陥らなくて良くなるような対応を」というメッセージが伝えられた。