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《リポート 》チャレキッズモデル企業向け高原浩氏特別研修会 

障がい者雇用を成功させるための要素を濃密にレクチャー

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チャレキッズ では今年度、1社でも多くの、一人でも多くの就労、雇用へと接続する実績を作ることを目標に掲げています。
その目標達成のため、チャレキッズ の法人会員企業の中から、「障がい者雇用を具体的に進めたい」とお考えいただけている企業を「チャレキッズ モデル企業」と位置づけさせていただき、雇う側も雇われる側双方にとって適したマッチングになるような研修や取り組みを行なっていきます。

そのためのセミナーや企業見学会などを企画していくのですが、今回の特別研修会もその一環です。

「飼い殺しさせないための支援」と言う本の著作者、東京で就労支援事業所を展開する株式会社フェスティーナレンテの代表取締役、高原浩氏をお招きしての特別研修会です。

実直に積み上げてこられた支援のお話

私が高原浩氏の存在を知ったのはSNS上で知人がシェアしていた記事からでしたが、そのタイトルのインパクトに惹かれ、すぐに書籍を購入。
読み始めて、その文章の面白さ、知ることがなかなかできない支援の現場のお話、その支援の内容と結果、さらには、高原氏の経験や学ばれたことから得られた思想や哲学、そこに裏付けされた支援の内容と結果に「ぜひお話を伺いたい!」と思い、東京を訪れた際に事業所まで訪問したのがきっかけでした。
現場も拝見させていただいたのですが、そこで行われていた、作業を通して学んでいくと言うスタイルに一貫したものを感じました。
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また、高原さんのお話や文章には、様々な古書や哲学の内容が引用され、とても読書家でいらっしゃる。
だからでしょう。文章にひきこまれてしまいます。
そんな高原さんのお話をぜひ、チャレキッズ モデル企業の皆さんにも聞いていただき、学びとしていただきたい。
そう思って、今回、「高原浩氏特別研修会」を実施させていただきました。

参加いただいたのは、チャレキッズモデル企業の皆さん 

今回、チャレキッズモデル企業となってくださっているのは、これからしょうがい者雇用を始めようとお考えの企業、最近始められた企業、現在雇用を継続しているが、よりブラッシュアップしたいと積極的に考えてくださっている企業の皆様です。
そこに、講師企業として、株式会社障がい者つくし更生会、ATUホールディングス株式会社、アスクルロジスト株式会社という一般企業で障がい者雇用を実践されている企業に参加していただいています。

会場をご提供くださったのは、株式会社56フーズ・コーポレーションの「シカゴステーキ・オーロラ」。
ブッフェスタイルで美味しいお肉とお野菜がいただけるお店です。

ランチとして贅沢なお肉と新鮮野菜をいただき、そして前半講義、後半トークセッションと言う形での研修会を行いました。
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第一部は障がい者雇用の基礎知識

前半の講義では、障害者雇用を企業が行う上で知っておくべき内容を紹介。
日本における、障害者雇用の現状、今後、障害者雇用の制度、助成金の仕組み、合理的配慮について、採用の手順などについて講義を受けました。
その中に出てくるのは「適職場」という考え方。

適職場の要件とは

①責任を負って任される仕事があること
②職場が「彼、彼女がいることで、助かっている、貢献してもらっている」と感じられること
③本人が「職場に貢献している」という感覚を持てること。

と髙原さんはおっしゃいます。
そうなるためには、採用される側だけでなく、どちらかというと、雇用する側にその環境を整備する必要があると思われるのです。
環境が整備できていれば、適切な支援を受け、訓練を積んできた方であれば、支援機関の見立て通りのパフォーマンスが発揮できる。
また、「支援側でしかできないことと企業側にしかできないことがあります」ともおっしゃっていました。
それぞれの支援範囲で環境や訓練を整えて、共に成長する仕組みが必要です。

第2部 座談会  

第2部はそれぞれの企業の現状をテーブルに広げ、その悩みや今後の方向性、迷っているポイントなどを挙げていただき、アドバイスを共有する、というスタイルで進めました。

飲食店経営企業

最初の共有は飲食店を経営する企業。
現在200名を超える従業員がいらっしゃり(アルバイト・パート含む)、障がい者雇用を通して、人材育成や社内環境のブラッシュアップを図りたい、というご要望をお持ちです。これから障がい者雇用を考えていきたい、という段階です。
質問は

「とりあえず、思い切って採用してみたいが、そういった「まずはやってみよう!」という手法はありなのか」
「雇用の際には、調理の下ごしらえ的なものを想定しているが、できれば店舗に立ってもらうなど、接客の部分にも挑戦してみたいが可能か」
「調理場は刃物や火、油など危険なものがたくさんあるが、精神障がいのある方を雇用することはできるのか」
「従業員たちに彼らのことを学んでもらうための仕組みやセミナーなどはあるのか」

というものでした。
高原さんからは、

社員教育として、また社内風土の改善やブラッシュアップに障がい者雇用が有効であることはすでにたくさん事例が出ている。
例えば、ユニクロ。障がい者が店頭に立つことで、ホスピタリティがぐっと上がったそうです。
ユニクロの障がい者雇用について
なので、ぜひ取り組んでいただきたい。

また、障害の種別で言うと、知的な障がい・精神的な障がい、どちらのタイプでもその方の個人のスキルや特性に合わせて、考えていただければマッチングできると思います。
飲食店のフロアなどで知的障がいのある方や精神障がいのある方が活躍されている企業やお店はいっぱいあります。もちろんキッチンも同様です。
大切なのは、個人ときちんと向き合うことです。
精神の方で、気分や体調が安定しないという方については、超短時間などからはじめ、リスクヘッジをしておくこと。
そして、そういった方々への声がけや対応などについては、社員や調理人の皆さんに理解してもらい、普段はしないかもしれない配慮や声掛けをしてもらうことでクリアできる。それがより良い職場づくりにもつながっていく。

そして、そのための研修という意味で言うと、これは自分たちで企画するしかありませんとのこと。
※これについては、(チャレキッズとしては)今回のような研修をより企業毎にコンサルティングしていき、適職場となれるお手伝いをしていく考えです。

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その他、支援機関などを利用して、障がい者を受け入れるのはどうか、などの質問も出ましたが、そこに関しても支援機関とのタッグの前に環境を整えること、そして、実習などを通して学んでいくことをおすすめされていました。

社会福祉事業を展開する企業

続いては、福祉事業を営む企業。高齢者を対象とした福祉事業所、児童を対象とした事業所を展開されていらっしゃいます。

障がいのある方の雇用にもまだ積極的には踏み込めていない。
その理由として、社員全体の意識として「障がい者雇用によって企業価値が上がる」、「職員の意識が変わる」という効果についてまで考えられていない。
さらに、障がい者雇用については、過去に苦い経験があったと。
それは、以前、しょうがい者雇用についての段取りなどに知識がなく、適職場という考え方も持っていなかったので、社内のコミュニケーションが行き渡らず、1年経たずで離職されてしまった。
失敗経験が「やっぱり障がいのある人は難しいよね」という空気になってしまっていること。
なので、まずは職員が障がいのある方を理解するために、指導する立場の人間が知識を得て、目的や目標を持って落とし込んでいかないといけない。

現在雇用を継続されている方についても、適職場とはなりきれていないと思う。

そういった経験から、しょうがい者雇用に積極的になりきれない深層心理が働いているかもしれない。

サポートしてくれたジョブコーチも人によって支援の質がバラバラ、丁寧な人もいればそうでない人もいる。
現場の人間がその変わりを担うのは難しかった。
全体の体制をまずは整えることが大切だ。

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高原さんのコメント

障がい者雇用にはお金にならなくても良いことがたくさんある。
例えば、知的障害の清掃チームが福祉施設で働いていることで、高齢者のみなさんが清々しい彼らの挨拶などに救われる。
職場の雰囲気は、障害のある方がいることでよくなる例はたくさんある。
仕事の切り出しでいうと、清掃、事務補助、送迎などもある。
精神の方を雇用する場合、ドライバーなどであれば、薬を飲んでいるので、そのことが業務上支障があるかどうかは、ドクターとの相談、判断を仰ぐことが必要。
高齢者の施設で言うと、ベッドメイクなどにも従事できるが、知的で自閉症で、ということになると、一人での判断が難しい場面もあるので、必ずペアで回るようにする。
業務士、電球交換、車両洗車、直接の介護にはかかわらない、という事例もある。

講師企業からのコメント

うまく行かなかった事例を、その経験を、他責にして引きづらないほうがよい。
地元の支援学校に行っても、できそうな人はたくさんいます。
障がいのある若者が施設にいて、元気に挨拶をして仕事をする姿。
その姿に高齢者がどれだけ癒やされるだろう。彼らがいること自体をプラスに替えられるかどうかは、経営者が意識して行うかどうかだ。
それを、法人の付加価値としていけるはず。
プロとして高い技術がなくてはできないこともあるが、そういうことが見つけられる福祉事業所と見つけられない事業所とでは違い出てくる。
それが見つけられる事業所が今後生き残っていける。
彼らとの職場づくりが、我々が考えるチャンスとなる。成長するチャンスとなる。
できない企業はできない理由を見つける。できる企業はできる理由を見つける。
自分たちが発想の転換をしなくてはならない。

方法としては、一つの良い事例を作る。そして、どうしてそれが「うまくいったのか?」その理由を見つける。
うまくいった理由を見つけ、できた社員を評価する。
評価に乗せていく仕組みを作ることで、他の社員が「なるほど、やると評価されるのか」となる。
そして、お客さんや利用者が組織が評価さ、「なるほど、こうやってお客様からも評価されるんだ」と思うようになる。
それらの価値を見いだせるか。

他所と違うことをしようとすると、我慢することが必要な時間が出てくる。
変化していくことを「待つ時間」、会社として待つ時間を作る。

また、うまく行った店舗とうまく行かなかった店舗の違いを考える。
違いが問題点顕在化のチャンス。
それを狙って、狙うつもりで彼らを雇用するというくらいの意識が合っても良い。

この後も住宅メーカーや事業プロデュース企業の共有も有りましたが、今回は割愛させていただきます。
チャレキッズの法人会員企業向けには、動画で情報を共有させていただきますので、そちらを御覧ください。

最後に高原さんから

今回、「飼い殺しさせないための支援」という本がキッカケで呼んでいただきましたが、結構、企業の方も購読してでくださっていて、感想をもらうことがあります。
その時に「うちの社員のこと書いてない?」とよく聞かれます(笑)。
そのくらい、本に描かれている人々は、多くの社員に通底するものがある。
それは、私が「人を描こうと思っている」からだと思います。決してしょうがい者を描こうとは思わない。
そうやって人を描こうと書いていくと、「うちの社員のこと?」という感想が返ってくる。
職場は人付き合い、どういう相手であろうと人付き合い。だから人を見ようとする。

きちんと支援をしていくために、対象者の情報をとっていく。情報に振り回されないようにするために情報をとるんです。
「この人には麻痺がある」ですとか、「これまで職場を転々としてきている」とか、そういう事にとらわれないために、情報を仕入れる。
そこを勘違いしている人が多い。情報に振り回されてしまうんですね。

そして、もう一つ。
行いや事象に反応してはいけない。「この人が何を言ったか、やったのか」に反応してはイケナイ。
「なぜそのようなことをやったのか?」を考え分析するようにする。
やったこと、言ったことは表層のこと。どうしてその行動、発言に至ったのか、その本質を分析することを心がける。

「御本尊との付き合いする」ためには、なんでこういうことを言ったのかな?ということを考えないといけない。
自然とそういう習慣付けをしなくてはならない。
そうやっていると、「どうしてこういう事になったのかな?」という風になっていく。
質問のクオリティが上がってくる。

研修の時に、「どうして彼がこういうことをするかを考えたんですよ。1番目に思いついた理由、2番め、3番目。そこから1番目が主な理由になっているのではないかと思うんですが、どうでしょう?」という質問のカタチに変わる。
そんな企業にみなさんがなっていくことを期待しています。

今回、髙原浩さんにお越しいただき、積まれてきた実績から様々な知見を与えてくださったことに感謝申し上げます。
チャレキッズとしても企業の皆さんと単なるセミナーではなく、膝を突き合わせて深く語れたことは、「障がい者雇用できる企業を生み出す」という
目標への新たな一歩になったと思います。
また次回、各企業の進捗が報告できるよう、取り組んでまいります。
ありがとうございました!

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2019-06-21 | Posted in blog, スタッフブログ, セミナーNo Comments » 

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