ジョブスタディリポート③ 〜就労に必要な3つのチカラ〜 パネルディスカッション
パネルディスカッション
つづいてはパネルディスカッション。 お二人への質問を開場から受付け、それをもとにお話を展開して行きます。
どんな質問が寄せられたかと言うと
☆得意、不得意を知る機会と、できることと工夫すればできることの具体的なプログラム(実際に行っていること)を教えてください。
☆障がい者本人に自分の特性を理解させるにはどうしたらよいか?
☆障がい者本人の働くためのモチベーション、働く準備をするためのモチベーションを生み出すには何をすればよいか?
☆就労支援の立場から、どんなチカラを学校、家庭、放課後等ディサービスなどで伸ばしていく必要がるか?
☆障害のある人が住居を確保しようとする時、保護者が高齢だったり、不在の場合、難しいと聞きました。どのようなほうほうがあるか教えてください。
☆自己肯定感「得意をほめる」?
☆本人のやりたいことと向いている事が違ったときにどういう対応をしていますか?
☆障害のある人達と一緒に働く中で、「正直しんどい!」と思うことはどんなことですか?またそれをどう乗り越えていらっしゃいますか?
などなど。。。
すべての質問には答えられませんでしたが、以下のようなやり取りで展開されました。
自己肯定感を高める
田尻:
自己肯定感をたかめるのは難しい。
私は褒められて育ってきた。実際、成績も良く、できると思っていた時期があって、親はとにかく褒めた。
しかし、褒めてもらったことで、過度な自信を持ってしまった。そして、親からも「医者になること」を進められ、私自身も「医者になろう」と思うようになった。
ある時、明らかに学力的についていけないな、という時期が来た。医者になれると思っていたが、自分には医大に合格する力量はない、と思った。
現実を見たときに挫折を感じた。
その時、これからどこを見て歩いていけば良いのだろう、という先の見えない恐怖に囚われた。
そして、医者になることをやめると言えなかった。私の中で、どこかで 親の影響力が強くあると思っている。
そんな経験もあり、私自身、自己肯定感が高いとは思えていない。
自分でも高めたいと思っているが、自分で自己肯定感を高める事は難しいことだと感じている。
しかし、支援する立場で言うと「努力をしていることをお伝えすることを大切にしている」
ただし、褒めるポイントは難しい。どこを褒めるのかをよく考える。
岩崎:
自己肯定感
枝葉の話からすると、「褒める時、結果を褒めない」。
結果を褒めるようにすると、結果を隠すようになる。
プロセスを褒めることが大切。
そのためには、相を知らなくちゃならない。
知るために話をする。ともに時間を過ごす。
そのとき、その場、相手が安心できる環境であることが大切。
私はそこにいて良いんだ、と思う。そういったところが大切になると思う。
自己理解を促進するためには?
田尻:
自己理解のギャップをどのように埋めるか。
繰り返し行うことで、何ができて、何ができないのか。
できないことも、どのように工夫をすれば、できるようになるのか。
よりよく伝え、伝えやすい形になるのか。
岩崎:
成功と失敗を恐れず話せる環境が大切。
その上で、記録を完全に残す。
やってみて、「ここまで出来たよね。でも、ここは出来てなかったね」。
それを本人と確認していくことで、「出来ている」ということが理解できるようになる。そういう、「記録」と「振り返り」が必要になる。
そう繰り返していくと、自己理解も進んでいく。いろんなことを知る選択肢がある。チャレンジする場があることで、知る機会も増える。
そして、やって見たときに、「好きな環境と嫌いな環境」もわかるようになる。
そういう、相対的な評価だったり、本人的にはどう思っているか、など多角的に見る必要がある。
得意不得意を見極めるためには
岩崎:
繰り返しやっていくことで、本人が気づく。
やりたい業務と向いている業務がある。
やりたい業務をやって見る、振り返る。でも、あまり出来ていないことを知る。
やりたくない業務がある、やってみる。うまくできている。やって、「褒められる」、「役に立つ」、という経験が喜びとなり、
自分自身で楽しみながら向いていることに向き合って行く。そういうプロセスを大切にすることで、得意と不得意が自分で理解できる。
正直しんどくないですか?
これは岩崎さんに向けられた質問でした。
岩崎:
そんなにコストはかからない。 何故かと言うと、コミュニケーションのコストが下がるから。
「あれやって」、と言って、やってくれる。そういう事ができるようになる。そして、私は幸せの構造は、「自分が幸せになるための行いで50点」、「相手が幸せを感じてもらえて50点」
それを合計して100点にしていくと考えている。
相手に幸せと感じてもらうために、割いている時間も、実際の労力を時間的に考えても「5%」程度の労力です。
8時間労働の家の5%、すなわち24分程度です。警備業は現場の本人の様子は本人か、もうひとりくらいにしかわからない。
なのでみんなで協力しあわないと、1人の情報すらも取得できない。
だからこそ、普段からのコミュニケーションを大切にして、お互いの情報を多くのメンバーで共有しているのです。
全体の何パーセント??
☆ 田尻さんへ
ATUのような企業は少ない。支援者や保護者側でしっかりと連携した上で、そこに関わってくれる企業でないとという印象。
実際にそのお願いができる企業ってどのくらいあると思われますか?
田尻:
障がい者の雇用をしなくては、という意識はあると思うが、その人材を活かしていこう、というところまで考えている企業は少ないと思う。
企業間でネットワークして勉強会をされている企業もある。そういう意味で、増えているな、という実感はある。
しかし、依然、身体障害の方を雇用したい、という意識が強い。
ただ、10年位身体障害者の雇用をされてきて、では、いざ精神障害、発達障害の方を雇用するとなったときに
ノウハウがない、失敗する、という事例も多い。身体障害者を受け入れられていたからと言って、発達、精神、知的、、も受け入れられるかというとそうでもない。
最近辞められた方の例で言うと、人事異動が社内であって、担当者が引き継ぎもしっかりされない場合、障害者が相談しても答えてもらえない、ということがあり、
理解するための面談がある、などの「知ろう」とする姿勢が大切。
岩崎:
10%あると思っています。それは何故かと言うと、10年間、赤字になったことがない、という企業が10%にある
こういう企業は「素地が整っている」ということ。
素地というのは社員に対する教育や環境整備が整っている、ということです。
各テーブルで意見共有
ここまでの話しを聞いて、各テーブルで対話の時間を設けました。
自己理解と自己肯定感について
参加者:
こちらのテーブルは保護者や支援者が多く
自己理解、自己肯定感についての話に。
誉めてやもっと根本的なこと。
子供に小さいときから自信をもたせる。
何かができるから自信がつく、ということでなく、根本的な自信。
自己肯定感。存在を認められる環境
自己理解の方ですが、障害者受容について、保護者の受容
本人に正しい人権感覚が育っていることが大切だとおもった。
参加者:
自分もよくできていないので、どう自己理解を進めていけばよいかわからない、という相談になっていた。
障害によっても納得してくれる人としてくれない人がいる。
受け入れてくれる人は自己肯定感も上がりやすいのではないか。
そして、保護者の障がいに対する受容が大切という話になった。
保護者の受容、障がいを理解してもらうからこそ、対応が変わって、本人の自己理解や自己肯定感を上げる
きっかけになると思う。とはいえ、、、なかなか向き合えない人がいるのも現実。
向き合ってください、とも言えない。
家庭との関わりはどのようになさっていますか?
ご家庭での障がい受容、障がい理解は、知識や意識もまちまちだったりすると思うのですが、企業として本人と向き合って、
ご家族のご協力は欠かせないかと思います。
ATUではご家族との関わりはどのようになさっていらっしゃいますか?
岩崎:
家庭訪問をします。社員みんながするようにしています。
家庭にも行きますし、お子様に対する障害者理解が進んでいないな〜ということもあります。
ご家庭の中で、感情表出が激しい場合、問題がこじれやすい傾向にある。
愛から感情が出るのだと思うが、精神的にも追い詰められていく、というケースがある。
しかし、家庭訪問を続けることで、信頼関係が醸成され、本人に対しての理解が家庭内で進むことは間違いない
うまい支援のコツ
参加者:
利用者の本人がチャレンジする時、こちらがどのように提示するか、ということ。
抽象的でなく、具体的に。
最終的な見通しがどこなのかなどのフィードバックをきちんと行うことが大切。
自分のところではラポールが取れてしっかりフィードバックができているか。送迎車の帰りの道なりで今日、どうだったかというフィードバックしてはどうか。
もし話す時間があるのであれば、こちら側が図を書きながらなどとすると、語ったことが抽象的になりにくく、
良かったこと、悪かったこと、本人が持ち帰られること。
自己肯定感があがるのでは?
という話になりました。
信頼(ラポール)を築いていくは?
参加者の方からいただいた「ラポール(信頼)」を築いていく、手法として、どのような取り組みをなさっているか、伺えますか?
田尻:
「対等生」を大切にする。
支援者と利用者という上下関係ができやすいが、同じ立場に立てるように努力しないと同じ立場に慣れない。
上からものを言ってしまうことがないようにしなければならない。何が必要とされているか、面談するときにも、時間がわからない面談をするのではなく、
きちんと時間を決めて行うなどを心がける。
岩崎:
信頼はあくまで 数字的な話で、日報 出す器官の速さと回数で離職率が違う。
出すタイミングが早ければ早いほどよい。早く出せないときもあるので、クラウドツールなどを利用して、いつでも書き込め、コミュニケーションができる状態を大切にしている
「褒める」について
参加者:
プロセスを褒めるために知ることって 難しい。
寄り添わないと難しい。 結果を知ることはできるが、 経過を知ることを難しい。何を結果とするのかも難しいですよね。ということになりました。
その子のどこを結果にするのかも本人を知らないといけない。
でも、どうしても結果を褒めてしまう。でも結果を褒めることが悪いことではない。
記録、ということは大切なのです。人はすぐやめるのですが、 フェイスブックをやっていて 過去の情報を見る。
その時、昔はできなかったことができていることに気づく。
将来のことを見てみると、それを見るたびに愛おしくなる。
未来は、わたしたち次第
各テーブルで、活発な対話を行っていただき、その時間だけでもっとテーマが掘り下げられそうでした。
4時間、という長丁場でしたが、皆さん「長く感じなかった」と仰っていただけたのは、参加者の皆さんがそれぞれ課題をもって望んでくださっていたからではないかと思います。
最後に岩崎さんから、「私達に何ができるか、ということ、商品やサービスを利用するときに「”きちんと選ぶこと”」というお話がありました。
きちんと地域に貢献し、人材育成をしっかりやっている、適正な利益を挙げている、そんな企業を選んでいけば自ずと、人を大切にする、障がい者を置いてきぼりにしない会社が増え、社会が住みよくなる。
自分で起業しないと、社会を変える取り組みに参加できない、、そうではなく、「選ぶ」ことから参加できればと思います。
アンケート
ご参加頂いた皆さんのアンケートより「印象に残ったお話」の一覧を掲載します。
“・”工夫すればできる”ということを本人・支援者が知っていることが大切
・ちゃんと配慮や気遣いができれば働くことができる!”信頼ははやさ!””
ほめることはその過程を知ってこそというような内容が印象に残りました。
岩崎さんが、社員のご家族とも信頼関係を築いていらっしゃることに感嘆しました。
グループに落としたところでの話で、親が子供に告知するということで、(自分が教頭なので)今の保護者で相談されたこともあったけれど、深いものを感じた“自分の幸せ50%、人の幸せ50%=100%
という考え方がよかった”
企業は利益をあげ、存続させ続けなくてはいけないことが大命題ではあるが、まずは人として幸せを感じる力を基本に考え、人を大切にする会社づくりをされていることが素晴らしい。「時間をかけ、記録していく」
記録をとるABC判定振り返りをする。ATUさんのような会社があるんだとうれしくなりました。リタリコのメール配信たのしみにしています。
プロセスをもっと大事にしたいです。
“毎日頑張っているプロセスを認め、スモールステップでできているところを褒める。
ただ全ての人に当てはまるので今日から実践していきたいと思いました。”
“・でこぼこを理解する
・プロセスをほめる→記録と振り返り
・ATUさんの取り組み・想い(あり方)”
“・障がいを本人だけに抱えさせない。だけど、その人生を生きるのは本人
・知的の方=当たり前のことをバカにせずにちゃんとする
このワードが心に残りました。”
“・自己肯定感〜理解〜相談できる人
・マニュアル大切
・福祉=幸せ
・挨拶・返事・掃除、基本的なことが大切
・社会の役に立っているか”
“いい会社、いい組織を増やすと、国の問題が改善できる!(目からウロコでしたが、そりゃそうだなぁとガッテンしました。)
傍観者にならないよう自分の目・心でいい会社を選び参画していくことが、子供たちにいい社会を残していけることにつながるんだとわかり、実践していこうと思いました。”
自分の幸せ50%、人の幸せ50%、あわせて100%ほめる→プロセス→知る