リポート③【お仕事チャレンジフェス2020】〜 チャレンジフォーラム 〜
参加者と企業の対話の場:チャレンジフォーラム
今回のお仕事チャレンジフェスの特徴のひとつがこのフォーラム。
目的は「参加者も企業も一同に会し、お互いの体験を共有すること」でした。
ワークショップや研修などで、参加者がアンケートを書き記し提出することはよくあると思いますが、主催者側、ワークショップ提供企業がどのような感想を抱いたか、などを共有することは稀なのではないでしょうか。
今回、私達がこの企業側の思いも参加者に聞いてもらおう、と思ったのは、
企業側も学ぶ立場であり、情報を収集し、企業活動に生かしていかなくてはならないからです。
一方的に与える、受け取る、という関係ではなく、お互いが情報交換し、学び合う、それが障がい者雇用、障がい者就労には大切だと考えています。
そこで、今回のフォーラムでは参加者のみなさんの列と企業の皆さんの列を交互に配置し、
違う立場の方がお話できるようにしました。
一日の体験の共有
フォーラム冒頭では早速「本日の振り返り」を実施。
「印象に残っている言葉や出来事」を共有していただきました。
多くのみなさんが今日の出来事や印象を語ってくださり、非常に盛り上がりました。
その後、企業の立場、参加者の立場、保護者の立場のそれぞれから全体共有をしていただきました。
企業からは今日の体験を経て、可能性を感じたというお話。保護者からは不安もあり、もっと企業の情報を知れる場やこういった交流場が必要だというご意見。そして、参加者本人からも全体共有してもらいました。
そして、その後は障がい者雇用を促進している企業にご登壇いただいてのフォーラムへと移りました。
ご登壇いただいたのは、ASKULLOGIST株式会社 福岡物流センター副センター長、坂井博基氏、株式会社障がい者つくし更生会の専務取締役、那波和夫氏、ATUホールディングス株式会社の代表取締役、岩崎龍太郎氏です。
お仕事チャレンジフェスは企業にとっても訓練の場
それぞれの立場から今回のお仕事チャレンジフェスを振り返っていただきました。
ASKULLOGISTの坂井氏は、
昨年もお邪魔しましたが、ほんとに良い取り組みと思っています。
みんな楽しそうですし。まずは楽しそうであるということはとても大切です。
中には苦労されているなという企業もありましたが、その大変さがなくなって、ナチュラルに受け入れられるように成ると良いなと思います。
障がいのある方との取り組みが、「大変なこと」「特別なこと」ではなく、「アタリマエのこと」になっていくことで、障がい者雇用も進んでいくと思います。
そして、今後、お仕事チャレンジフェスを経て実習などにつながるようになって、指導者についてもらってやっている仕事が、一人でもできるように成る、というフェーズが体験できるようになると、企業と若者にとってより良い取り組みになっていくと思います。
障がい者つくし更生会の那波氏は
僕たちの会社は38名いる社員のうち34名が障がい者手帳を持っている。その彼らが成長していけるように日々考えながら仕事をしている。
それは彼らが成長することによって業績が上がり、周りからの評価が上がり、彼らの喜びにもつながるからだ。
それが企業の成長にもなる。
そのためには、彼らに信頼されることから始めなければならない。
今日は、初めて合う若者に対して、それをおこなうというミッションだった。
どうやったら彼らに認めてもらえるか。よい関係性が作れるか、そこがスタート。
そのために、どんな言葉を投げかけるか、身振り、表情、どんな関わり方をすると「この人になら話してもいいかな」と思ってもらえるか。
そう考えながら、体験作業を社員と一緒になってやっていく。
すると、最初こわばった表情だった子どもたちの表情がだんだん和らいだものになっていく。
そして保護者には、「この作業はこういう目的で行っています」「この作業を通してこういった適性を知ることができます」「お子さんの姿をみてどう思われますか」など、解説や意味付けを行いながら進めていきます。
ワークショップ後半の共有では、体験の感想でどんな「言葉」が出るかに注目していきます。そして、出てきたワードを拡げていくことで、ふだん使っている言葉や彼らが見ている世界を紐解いていきます。
その積み重ねを行うことで、彼らに響く言葉を選ぶことができるようになっていく。最終的には、子どもたちが「もっとやりたい」と思うようになるには何が必要か。
どう関わると「やる気」が引き出せるか、彼らに認めてもらえるためにはどのようにすればよいのか、その訓練をさせていただく場がこのお仕事チャレンジフェスです。
ATUホールディングス株式会社の岩崎氏
内容は坂井さんや那波さんがおっしゃったことと同じです。
まずは楽しい、と思うことが大切。
そういった意味では、来た子どもたちに「何が楽しかった?」と聞くと「56フーズさんのお肉料理」「一風堂さんのラーメン作り!」という回答(笑)
でも、それでいいんです。
仕事のきっかけも、「楽しそう」「やってみたい」「その世界に触れたい」と思うことがきっかけ。
同じように、私達の仕事にも「楽しさ」がある。それをこの体験の中でいかに体験してもらえるか、それを設計したり導いたりするためにはどんな言葉かけや関わり方が必要かを模索しています。
そのために参加者と同時に保護者の方にも同じ体験をしてもらうように設計しました。
そして、お互いが感じる事をそれぞれで共有するというふうにやっています。
この続きはまた後日、企業側の立場からのリポートブログで詳しくお伝えしますが、
三者でお話いただいた事柄は、障がいのある方との働き方を考える上で大変ヒントに成ることが詰まっていました。
登壇者の言葉で印象に残っている事を参加者に尋ねたところ、
・やれない仕事は無いと言われていたのは、大変、嬉しい言葉でした。沢山の企業がその様に言ってくれると有り難いですが…
・坂井さんの最初のことば。「参加企業が頑張りすぎている。障害者雇用が進まないのは大変だと思うから。もっと楽にできたらいい
・本人達ができることはたくさんあり、やれないことはないということ
・ASKULのような企業が増えると、本当の意味での共存ができると感じます
と言った内容が挙がっていました。
夢をもって挑戦してほしい
最後に、冒頭の全体共有時に参加者である高校生が発言してくれた内容をご紹介します。
彼女の言葉がこのイベントの意義のすべてを物語っている気がします。
ある高校生の言葉です。
「私は高等学園(特別支援学校高等部)に通っていて、いま就職に向けて頑張っていてます。でもただ、、、、みんなが就職できるところって限られているじゃないですか。。。。それって悲しいです。
でも、今日のようないろんな企業が集まっているところで色んな体験ができることは、楽しかったし、やりたいことをみんな見つけて、こういうのは難しいのではないかと決めつけずに、みんなちゃんと夢をもって挑戦してほしいと思いました!
ありがとうございました!」
障がいがあるから諦めるのではなく、やりたいことを語り、夢を描き、人としての経験を積みながら成長していく。
それは誰にでも許されることであり、認められるべきことです。
そのチャンスを奪うような社会であってはなりません。
しかし、まだ今はその環境が整えられているとは言い難いです。
誰もが夢を語り成長していくことができる社会。それが成熟した社会であり、豊かな社会と言えるのではないでしょうか。
そんな社会の実現を目指そうとしている、人々や企業がいる。
そして、それは不可能なことではない、多くの方がそのことに気付き、触れ、その方法を学ぶ機会が増えるよう、これからも取り組んでいきたいと思います。
まずは参加者アンケートを本にしたリポートをお送りしました。
続いては、企業アンケートを本にしたリポートです。
こちらもぜひ御覧ください!
(リポート④へつづく)